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第304話 完全に拒否

退院の日、田中仁は彼女に大きな花束を持ってきた。「鈴ちゃん、これからの毎日が健康で幸せでありますように」

三井鈴はそれを受け取って微笑んだ。「ありがとう、田中さん」

三井助も一顔笑みを浮かべながら近づいてきて、二人に目を向けた。

「鈴ちゃん、君は本当に私たちを怖がらせた。君は知らないだろう、あの日の状況はどれほど危機的だったか。仁君のおかげで黒崎さんを呼んでくれて、君を死の淵から引き戻してくれた。私たち、ちゃんとお礼を言わなきゃ」

剛志を言及すると、三井助はその日、三井鈴の手術を終えた後から、剛志を見ていないことに気づいた。

彼は思わず尋ねた。「黒崎さんは?彼の姿は見ないの?」

田中仁は説明した。「休暇に帰ったんだ。彼はいつもどこにでも現れるから、気にしなくていい」

「それにしても、彼は私の命の恩人だから、今度ちゃんとお礼を言わなきゃ」三井鈴は真剣に言った。

田中仁は「次は彼を呼び出そう」と言った。

数人が病室を出て廊下を進んでいると、次の瞬間、みんなの足が一斉に止まった。

その時、翔平がゆっくり立ち上がり、三井鈴を見つめた。数日会わなかった彼の顔には少し疲れた様子が見えたが、彼の目は輝いていた。

三井助が何か言おうとしたが、田中仁が彼を止めた。「鈴ちゃん、私たちは外で待っているから」

三井鈴は言葉を発しなかった。彼らが立ち去ると、翔平がやっと口を開いた。「元気か?」

三井鈴は穏やかに微笑み、普通の心で言った。「私は元気です。安田さんの気遣い、ありがとう」

「三井鈴、心配している」

三井鈴は無表情で尋ねた。「安田さん、まだ帰らないの?」

「君に会わないと、心配なんだ」

三井鈴は「会えたから、安田さんは帰っていいよ」と言った。

「三井鈴!」

翔平は彼女を呼び止め、言葉には今までにない深い愛情が込められていた。「以前、こんなにも私にとって大切な人がいるとは思わなかった。君の命が危険にさらされることを知って、君がいつの間にか私の心の中に住んでいたことを発見した」

三井鈴は軽く笑い、「安田さん、冗談ですか?私が空の事故で九死に一生を得た時、あなたはどこにいたの?

その時は、私の人生で最も脆い時期ではなかったか?でも君はどこにいた?思い出してみると……君は愛する人と一緒に病院で妊娠検査を受けていたようだ」

それを偶然彼女が見かけた。
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